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中山将
中山将 LiveAlbum 短編唱「少年」 特設ページ

音楽は、僕などが語るまでも無く、日々多くの人々の心に栄養を与えています。
僕は何よりも音楽が好きです。
様々な音楽がある中で、僕は「物語性」「色味」「詩情」「風景」そういったものを持った音楽を表現したいと思い、ずっと曲を書いてきました。16歳から曲を書き始めて、10年近くが経った頃、この「短編唱」というフレーズが頭に浮かびました。遠藤周作、村上春樹、三嶋由紀夫 とっても素敵な短編集の様に、僕の楽曲も「短編集」に!いや・・・音楽だから「短編唱」だ!そんな安直な発想の元に本アルバムに記録されたワンマンライブ 短編唱「少年」を企画し作り上げました。
各楽曲が持っている「物語性」「色味」「詩情」「風景」を音楽で表現する。そのためにピアノ、バイオリン、ドラム、ベース、ギターの信頼する仲間を集めました。
音を作り上げる中で僕が各ミュージシャンに伝えたのは「朝に憂鬱になっている少年の様なピアノ。」「小さいおっさんがカーニバルではしゃいでいる様なドラム。」などといった、抽象的極まりない注文でした。でも今回サポートしてくれた仲間はその言葉の奥にある「音」を探してくれました。そんな仲間と一緒に音を、風景を、物語を作り上げるのは、本当に本当に楽しかった。
また、各楽曲の前に読むプロローグとなる詩。ポエトリーリーディングにもこだわりました。自分の中に生まれた世界に対して、素直に正直に書き、朗読しました。
2014年12月14日 新宿にあるSACTというライブハウスにて短編唱「少年」は開演しました。
そこで表現した世界が聴いてくれた人の心の隅っこに在り、何かのタイミングで心のより所に、あるいは逃げ場になってくれたら。そんな思いで表現しました。
このアルバムはその中から13編を記録したものです。あるいはこのアルバム自体が短編唱「少年」とも呼べるかと思います。
是非聴いてみてください。ページをめくってみて下さい。様々な世界を旅しているような気分になってもらえると思います。
中山将
第一編 スタンウェイの朝食
夢を見ていた様だ
スタンウェイは 憂鬱だった
窓の外鳴いているヒバリの声を聴いた
肌寒いこの部屋に白々と朝が来て、スタンウェイはベッドを出てリビングに向った
トーストの焼ける匂いがして 食器の並ぶ音がして
マリアの微笑みの気配がして
理由の無い彼の悲しみは、静かに仄かに薄まっていくのを感じた
「おはようスタンウェイ。今朝の気分はいかがかしら?」 マリアは言う
「ありがとう。大丈夫さ 君がここにいるから。」
もしも僕が幾らか、まともになったら 君の為にきっとトーストを焼きたいな
トーストがこんがり焼きあがって
食器が整然と並んで
マリアの微笑みは豊かに輝いて
理由のない彼の悲しみは静かに仄かに薄まっていった

第二編 海の恋文
海岸線のベンチで
小さな瓶にそっと入れたのは
君への本心を綴ったクシャクシャの手紙
悠遠の水平線 僕は決して君にはなれないなぁ。
だから手紙と瓶をそっと波へ託す
君へ宛てた気持ち この海を越えろ
遠くて 遠くて でも愛おしい距離を越えて
君と生きていけたら
海を越えた先に、また新しい海が待っていても
大丈夫 俺はもう優しいだけの男じゃないよ
君に触れたい 本当の声が聴きたい
失意も苦悩も覚悟している
海の向こうの君に出会うためなら
君へ宛てた恋文 この海を越えろ
会いたい 会いたい 深い場所で
途方もない距離を越えて
言葉をも越えて
そしてやっと出会えたら絶対幸せになろう
心と心を隔てていた二人の海は
鮮やかな夕陽で染まっていくはずだよ
その日が来た時は 一緒に暮らそう
海辺で
第三篇 花火師の恋
とある蒸し暑い夏彼は一つ決心をした あの娘のために存在する決心を
あの娘はまるで夜の様に不意に現れて そして静寂の様に彼の心を奪った
だけど彼女は知らない街へ行く
彼の知らない街へ行っちゃう
最後の夏に僕は あなただけのために
儚くて永久の花をあげよう
あなたが思う以上に 僕はあなたのことを
毎日毎日想っていたんだ
青年はリュックを背負い自転車をこいだ
プラットホームに程近い河川敷へ急ぐ
何一つ語ることなく彼は作業を進めた
「時間よ止まれ」って本気で思った
青年はほんの少しだけ水を飲み
導火線にそっと火をともした
古びたプラットホームに訪れる列車が
あの娘を連れ去ってしまう前に
僕がたった一つ伝えたかったことは
二人が見ているのはいつも同じ空
艶やかな畦道も、優しい木陰も
ガラガラの駄菓子屋も、気の抜けたサイダーも
路地裏の秘密基地も、無口な校舎も
淑やかな浴衣も、なけなしの恋も
どれだけ「そばにいたい。」と願ってみても
そばにもいられないことだってあるんだ
「大人になれよ」って言われたって
男にはそうはいかない瞬間があるんだ
生涯を捧げてもかまわないほどの 声無き叫びと打ち上げ花火
月より 蛍より どんな映画より
あなたの胸の中で永久に輝いて欲しい
とある蒸し暑い夏、花火師の青年は世界が霞むほどの恋をしていた

第四編 小さいオッサンの国
少年はベッドから天井を眺めてた
そしたら隅っこに突然現れた
滑らかな素肌と つぶらなその瞳
彼は導いた彼らの祖国へ
その国には「お金」 や 「革命」 は存在しない
あるのは 程よく炙った「スルメ」 と 「ワンカップ」
ようこそここは小さいオッサンの国 哲学者も数学者も音楽家も工場長も
みんながみんな小さいおっさんなんだよ 今晩は100年に一度催すカーニバル
少年は目が覚めた、5月の眩しさに
テーブルに残されたワンカップの空き瓶
第五編 僕のおじいちゃんは公園に住んでいる
僕のおじいちゃんは公園に住んでいる ママには「内緒にしてなさい。」と言われたけれど
二十六年も公園に住んでいる おまけに高円寺の公園に住んでいるお茶目さだ
だけどおじいちゃんの秘密を僕は知っている 草も木も眠るAM3時におじいちゃん
ジャングルジムの上に音も立てずに登って望遠鏡で悪の組織の居場所をそっとサーチしているのさ
ゴミ置き場で拾ったレイバンのサングラス 路地裏で手にした弾の入ってないリボルバー
そして僕のおじいちゃんは街へ繰り出すのさ 己の正義を守るために
僕のおじいちゃんは お金も、名誉も、女も、お酒も、煙草も、家も、いらない
「信念」そいつを胸の真ん中にいつも掲げていれば お前はいつだってお前を見失うことはないのさ
さまよう奴らに彼は銃口を向けるが 引き金を引くことは決して無いのだ
「話せばわかるさ。」「話せばわかるさ。」口癖の様におじちゃんは言った
戦争を知らない子供たちへ 平和とは 生きていくとは 伝えたくって
僕のおじいちゃんは公園に住んでいる 僕のおじいちゃんは公園に住んでいる
今日もおじいちゃんは段ボールの中で願う 全ての人々が穏やかに暮らしていける世界を
第六編 冬
優しいだけじゃダメなんだよと、あなたがつぶやいた季節が来た
この町にある静かな教会、大きくて温かい手の感触も
ああ私は忘れない例えばいつかあなたが忘れてしまっても
雪が降っている
季節が光るよ何一つ語らずに
色めく街にはクリスマス近づく
そして世界は染まるよ美しすぎる
ねぇあなたに届けよ、今、ただ
あぁ、行き場を無くしたハウスレスのあの涙が、今ただ光る
あなたがいない冬が来たんだね大人になるのにはまだ少し時間がかかるわ
第七編 蒼い背中のドリー
ドリー部屋に寝転んで僕らおしゃべりをしよう。この温度、この距離を何故だろう?幸せに思う。
ドリーその蒼い背中は 時折寂しげに見えた。そのポッケに忍ばせたいつか過去になる未来よ。
そして大人になっていく 嫌だな
裏山で見てたあの景色を 僕は忘れたくはないよ。
ドリー蒼い背中のドリー僕らは空も飛べるさ。
ドリーまだ起きているかい?どうも眠れないみたいだ 少しだけ話をしないかい?今日は月が綺麗だから
いつか大人になったらまた会おう
空き地に隠した宝物を僕は忘れたりしないよ。
ドリー 蒼い背中のドリー さぁ未来へ帰ろう そこで笑いあえたなら
第八編 シルヴィアカフェ
カフカの小説片手に、眉間をしわくちゃにして歩いている 少し不機嫌な君と向かう茶色い屋根が目印の喫茶店
髭を生やしたマスターが君に気づき話したよ、今日は良いマンデリンが入ったよ。
あら本当??って頬を緩めた、そんな
シルヴィア・カフェへようこそ。追憶と安らぎがある場所。セピア色の古い書物 窓際に咲いている花は ブーゲンビリア。
本を読む女子学生、うたた寝をしているサラリーマン 皆それぞれの場所で肩肘をついて未来を思う 永遠の午後
焼きたてのシナモンロール、ハーブ入りのクッキー、ボサノヴァのゆるふわなビート、そっと
香しいこのダージリン、まんまるまるのマカロン、そんな日々の束の間
人はみんなみんな小説家さ 想像すればどこへでも行けるさ シルヴィア・カフェに来るとそんな哲学が浮かぶから 不思議なもんさ
マスターは夢の中 西の窓から射す夕焼け 「もうそろそろ帰りましょ。」優しく君が呟いた
「うん、帰ろ。」

第九編 小さな恋の話
喫茶店の隅の席で哲学の本を読んでいる君はふてくされた顔してミルクティー掻き回している
遅れてやってきた僕は慌てて取り繕う「今日のデートはあの公園さ、だから機嫌直してよ。」
そのとき不意に見せた微笑みやっぱり綺麗で
水面、白鳥、西日の光、芝生、ベンチ、終わらぬ青空
そこに君のモチーフを置いて長方形のフレームで包む
どんな名画もその価値を無くすよ 君のいない世界はつまらない
僕より素敵な男はこの世界に沢山いるけれど
誰にも負ける気がしないんだ 君を思う直向きさは
誠実さとか優しさとかを柄にもなく考えた
車、時計、高級マンション、名誉、ご馳走、確かにほしいけれど そこに君の存在がなけりゃ 幸せ分かつ君がいなけりゃ
僕の日々はその価値を無くすよ 君こそが僕の欲望
バイバイ告げる夕陽の小道 とても小さな恋の話
「明日また会おう。」僕が言えば
君は笑って頷いてくれる
そんな素晴らしいことってないだろう
僕たちには明日がある
僕の命がその価値を持つのは君と生きる刹那にある


第十編 あなたの為に詩を綴っている
ベランダに座って見ているこの夜空の向こうには
愛しいあなたがちゃんと生きているんだね ラジオから流れる綺麗なフォークソングは
宛てのない二人の距離を守っている気がした
会いたいよ。何度でもあなたに会いたいよ。
いつか会えなくなっちゃう日まで。嫌になるくらいあなたに会いたい。
いつもうまく言えなかった。あなたを思わない日は無かった。
人間なんて馬鹿だからそれだけで生きていける。
蒼い配達夫が長い国道をいつか走り終えたら、あなたのもとへ行くよ。
会いたいよ。逃げないであなたと向き合いたい。
感謝をしてもし切れないんだあなたがいなけりゃ僕は無かった
あなたが見ているその景色をいつの日か二人分かちあえたら
一人ぼっちで生きようなんて二度と思わないで。
紙とペンで綴っているよ目に見えないものを伝えたくて
いつも上手に表せないけど今夜はうまくできる気がする
会いたいよ。今だってあなたに会いたいよ。
ベランダに座り夜空一面に縦書きの詩をあなたへ綴る
幸せとは喜びとは本当はもう全部わかっていたんだ
それはただあなたが生きてくれていること
第十一編 図書館
フランス映画のワンシーンのような空気の澄んだ秋の日
クラシックな音楽を聞きながら少年は図書館へ向かう
最適な気温と最適な静けさをこの図書館は持っている
その一番奥の椅子に座って本のページをめくる女の子
ヘミングウェイ サリンジャー サン・テグジュペリ
彼らは僕に囁いた
知らないことを学んでいく
恋ってそういうものなんだよ
図書館で君に恋をした
少年はファインタジーの小説をめくり勝手気ままな主人公
銀色の馬車で迎えに行くよ君は清く聡明なヒロイン 女の子悲しませるような男は地獄に落ちちゃう
ヘミングウェイサリンジャーサン・テグジュペリ 彼らは僕に訴えた自分と向き合うことこそが
人を愛する事なんだよ本を読むように僕は
図書館で君に恋をした


第十二編 桜は希望
この桜を貴方に見せてあげたいと願う その気持ちだけで世界は美しい
ねぇ桜はは希望さ
スーツを着た男性も腰の丸いおばあちゃんもみんな、みんな見つめてるどことなく微笑みながら
線路沿いに咲いてる薄紅色の空にゆっくり抱かれてゆっくり抱かれて、ふとあなたを思う
この桜をあなたに見せてあげたいと願うその気持ちだけで世界は美しい
ねぇ桜は希望さ
あなたは春のようだ温かくて然りげ無い優しく有ることに何の迷いもない
南風が吹いたら花びらは空を舞う
年月の重さ季節の儚さ仄かに、悲しみ残して
この桜をあなたに見せてあげたいと願う
その気持があればいつでも逢える
ねぇ、あなたを思っている
この桜を貴方に今見せてあげたいと願った
その気持ちだけで世界は美しい
ねぇあなたを思っている
ねぇ桜は希望さ
第十三編 少年
あぁ長い午後の果ての夕焼け
駅から続く商店街、焼き鳥の良い匂い
あぁリュックにしまい込んだ 魔法瓶
海を写した絵ハガキ
読みかけの短編集
銀色の夜行バスで星屑のハイウェイを今夜行こうよ未来の方角へ
寂しさを愛しながらその涙を信じながら
強くなろうよ
強く強くなりたい
物語は続くよ青や、赤や黒や、白に染まりながら
銀色の夜行バスで星屑のハイウェイを
今夜行こうよ未来の方角へ
寂しさを愛しながら
その涙を信じながら強くなろうよ
強く強くなれるさ
銀色の夜行バスで
